SONY TR-731

概要

TR-731は、短波と中波2バンドの横型の7石トランジスタラジオです。スピーカー部分が出っ張った、昔のカメラのようなデザインです。
２バンドラジオですが、周波数の表示が、つまみに印字されたものを小さな窓からのぞくデザインで、見にくいです。小さい表示ですが、この時代、アメリカ向けのラジオに表示が義務付けられていた、CONELRADの三角マークはしっかりついています。チューニングつまみが小さいこともあり、短波の同調のためのファインチューニングが付いています。
出っ張ったスピーカー部分ですが、「キノコ型」と名付けられたスピーカーが使用されています。1モデル前のTR-725や、同じ頃に販売されていた、TR-650にも採用されています。ドーム型というか、逆コーンというか、中央部分のボイスコイルが前面にでており、エッジ部分が後退しています。音に広がりは出やすいのかもしれませんが、現在見たことがあまりないタイプで、主流にはならなかったようです。カタログの表記からは、音質向上を狙ったもののようです。
前モデルのTR-725は複雑な形をしていましたが、それに比べると、躯体は角張ったデザインで、概ね直方体なのです。ただ、細かく見ると、大変凝った複雑な形状をしており、デザイナーの意気込みを感じます。背面よりも前面が高さ幅とも1㎜程度大きくなっています。更に、前面と上下面が、スピーカの取り付け部分が1㎜程度大きくなっています。文書では説明しにくいのですが、ものすごくオーバーに描くと以下のようなスケッチになります。

このままでは座りが悪くてこけてしまいますので、底部の足で調整しています。下の写真のようにスピーカーの下にある足は、ほとんど突起していません。反対側の足は長めで、裏面側が高くなっています。
革製のキャリングケースが付属していたようです。前述のとおり、本体は大変凝ったデザインだと思うのですが、このケースに入れてしまうと日の目をみません。もともと、パッと見で気づく人も少ないかもしれませんが。
短波用のロッドアンテナは取り外し式で、ねじ込むタイプです。付属アンテナは、皮製のケースの背面に収納できるようになっています。
トランジスタが7石使用されています。回路的には、TR-725をほぼ継承している感じです。局発・混合に2SA122, 中間周波増幅には2SC76 x 2 , ドライブアンプに2SD65,2SD66, 電力増幅には2SD65 x 2です。電力増幅は、採用例が少なめの、入力トランスありのシングルエンディドプッシュプル(SEPP)が採用されています。カタログにも、音質向上のために、OTL回路( Output TransformerLess)採用との記載があります。最終段のインピーダンスの関係からか、スピーカーは45Ωと、通常の5倍ぐらいのものがつかわれています。