SONY TR-627
概要
- 中波専用のホームラジオです。真空管ラジオの時代からの横長のデザインです。上部に取手が付いており、電池式なので、持ち運びも前提にされているようです。TR-712の系統を引くラジオと思われます。
- ホームラジオとしては一番廉価な部類で、オーソドックスな造りの６石ラジオです。簡単なものですが連続のトーンコントロールも付いています。内部の部品はぎゅうぎゅうではなく、ゆったりとしています。
- バーアンテナはしっかりした、大サイズのものが使用されています。バリコンも真空管時代からの、金属製のエアバリコンが使用されています。フェライトには外部アンテナ用のコイルも巻かれており、外部アンテナを接続してさらにAMの感度を上げることができます。
- 当時の据え置きラジオの中では、5980円はずば抜けて安いです。小型の真空管ラジオは1960年までにはほとんど駆逐されてました。価格面でメリットがあった据え置きタイプの真空管ラジオについても、この頃を境に姿を消していくようです。
- 6石ラジオで低周波のドライブアンプは1段ですが、スピーカーと躯体が大きいためか、聞きやすい音質でよく鳴るように思います。
- 基本的な作りはそのままで、受信帯を短波にした、TR-672Sという機種が海外では売られていたようです。内部はバーアンテナがない以外はほとんど同じようです。日本では茶木目のみのラインアップですが、海外向けに、緑とレンガ色のモデルも販売されていたようです。
- 回路的には標準的な6石ラジオのようです。使用トランジスタは、高周波～中間周波には2SC76 x2, 2SC73 x1が使われています。低周波は普通のトランス2個を使ったプッシュプル増幅で 低周波2SD65 x 1, 2SC383 x 2です。
仕様
- 発売：
- 1964年(昭和39年)
- 電源：
- 単1 x 4
- トランジスタ：
- 6石
- 操作部：
- 電源SW付ボリューム、チューニング、トーンコントロール
- 受信周波数：
-
- MW:
- 530 - 1605 kC
- ターミナル：
- イヤホン （アース・アンテナリード線）
- サイズ：
- H150 x W280 x D85mm （取手、足含まず）
- 重量：
- 1335g
- 色:
- 茶(木目)、レンガ色
- 製造：
- 日本製
- 価格：
- 5980円
メンテナンス１
本体は木目です。動作は問題ありませんでした。誰かが掃除してくださったようで、きれいなラジオでしたが、ケースに割れがありました。
中は、すかすかしています。比較的綺麗です。
電池金具をとめているビスの部分に割れがあります。接着剤で直しました。
しっかりとした、エアパリコンが使用されています。ベアリング付きです。
ケースから全体は割りと簡単に外せます。
ケースの割れは補修し、水洗いしました。
再組み立て後です。まだ、接着剤が完全に固まってませんでしたので、マイナス側の電極は取り付けていません。
メンテナンス２
動作は問題ありませんでしたが、なぜか裏蓋にはTR-627Sのものが使われています。内部は液漏れによる錆がありましたので、養生しました。前面の金色の飾り(樹脂製のテープ)が剥げてましたので、塗装してつけなおしました。
下部の飾りですが、へにょへにょの樹脂テープが使われています。接着剤が剥がれ、色も剥がれています。
一度剥がして、金色のスプレーで塗装しました。
とりあえず、清掃しました。中身がスカスカですので、やりやすいです。
液漏れによる汚れ、電極の錆などもあるため、シャーシ、スピーカー一式外しました。つまみが固くて外すのに苦労しました。
中身がきれいに外れます。故障してもメンテはしやすい感じです。
ケースにはダイヤルスケール等があるため、丸洗いせずにふき取りました。
見える部分ではないので、錆びた電極は錆止めだけ塗布しました。
カタログ情報等
製品のしおり(36GG39) 1964?
- ハンディ・タイプ
- 6石ホームラジオ
- TR-627 ￥5,980 (￥6,300)
- 持ちやすいハンドルつきで、コードやアースが要らず、どこでも美しい音の放送が楽しめます。経済的な大型電池(単1)を使用。高音から低音まで連続的に音質が変えられます。
コード、アースが要らないというアピールは、真空管ラジオを意識したもののようです。1960年頃にはポータブル真空管ラジオはほぼ駆逐されたものの、据え置き型は真空管ラジオはまだ価格競争力があり、並行して販売されていたようです。
2012/10/08, Update 2022/6/20>
No.55
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