SONY TR-1829

Serial No. 97362

概要

AM専用の変わった形をしたラジオです。1970年頃、ソニーの方針だったのかラジオっぽくないラジオがいろいろ発売されており、その一環のようです。高度成長期の頃の会社の応接室に置かれていそうな、卓上ライターのようなデザインになっています。同じころに、シガーケースを模したTR-1839も発売されています。
カタログには「マスコットラジオ」と書かれてます。贈答用、記念品として販売されていたようで、この類のラジオは「名入れ」をすることができ、実際、xx周年記念の景品等に使われています。このラジオも、今はもう存在していないようですが、とある鉄工所の五十周年記念と書かれています。
上部の大きなつまみ、ライターなら点火のために押し込むところですが、そこがチューニングダイヤルになっています。側面にSW付ボリュームと、周波数の表示部があります。日本ではこの木目調のものしか販売されませんでしたが、海外ではTR-1829Cの名称で、もっとカラフルなものが販売されています。そちらは、色が違うだけなのですが、応接室というより、スペースエージの雰囲気があります。
本体はコンパクトではありませんが、形が円形で内部を有効に使いにくいこともあり、基盤はかなり小さくて、バリコン・バーアンテナ・ボリュームは外付けですが、かなり小型のポケットラジオ並みの大きさで、部品の密度は高いです。デザイン優先なのか、イヤホンジャックもついていません。上部の銀色おリング部分は無垢のアルミが使用されています。
ふつうのラジオのスピーカーは効率アップのため後面開放型になっているものが多いですが、このラジオは密閉型になっています。底面にスピーカーが設置されており、その反射を聞くような形になるので、後面開放は案配が悪かったのかもしれません。
回路的には、非常にオーソドックスな6石ラジオです。電力増幅はトランスを用いたふつうのプッシュプルです。トランジスタは、局発・混合に2SC403, 中間周波増幅に2SC403x2, 低周波初段が2SC401, 電力増幅が2SB136x2になります。2SC401と2SC403は両方ともソニーで同時期に生産されていますが、hfeが多少異なる以外は同じ規格です。最近の表記だと、型番の最後のGRやYで分類されている違いかもしれません。2SC401のほうがhfeが低くなっています。