Sony 5F-90

概要

FM/AMの２バンドラジオです。「ソリッドステート10」というニックネームが付けられており(9石ですが)、かなりヒットした「ソリッドステート11, イレブン」と同時期のラジオのようで、これの弟分のようです。デザイン的にも、スピーカーグリルや周波数スケールが良く似ています（イレブンには、3バンド)。
1965年の発売で、日本で初めてのFM/AMラジオ発売からから3年しか経っていませんが、あまりレトロさを感じさせないデザインのように思います。これまでのラジオに対して縦長になり正方形に近づきました。イレブンの方は、ソニーのHP(SONY DESIGN)にも選抜されています。
イレブンは、保守性が悪くて修理面では評判が良くないようですが、このラジオはそれほど、ひどく無いように思います。基板は３分割で、どうしてもコード類はごちゃごちゃしているところはあります。中間周波の基板はぎゅうぎゅう詰めで、部品の交換が大変そうです。
このラジオには海外向けの5F-90Wというバージョンがあります。基本的な仕様は同じようですが、AMと違いFMは、アメリカと日本で送信周波数が異なるため、FMの周波数が違います。でもバリコン・スケール等は同じものが使われているようで、周波数の狭い日本バージョンは、文字盤上の周波数幅が狭くなってします。
FMラジオとしてはかなり初期のものですが、FM放送がステレオを売りにしていただけのことがあり、ステレオアダプターを接続するため、MPX out / Aux inの２つの端子が付けられています。
使用トランジスタは、FMの高周波には2SA454, 2SA455, 電力増幅には2SC383x2が使われていますが、その他の場所は、日本の型番ではない、型番の分からないトランジスタが使われています(m15とかm25とか）。ソニーは欧米へのラジオ供給の拠点として、1960年から5年ほど、アイルランドでトランジスタラジオの海外生産をしていたようですので、海外製トランジスタは、そのあたりとの絡みなのでしょうか。
発売当時の売り文句として、「メサ型トランジスタが活躍する高感度」というフレーズがあります。ソニーは1960年に世界初のトランジスタテレビを発売していますが、そのために各種トランジスタの開発に力をいれていました。2SA454,455は、メサ型のゲルマニウムトランジスタで、高周波特性が要求される、VHFのチューナー用として開発されたようです。

仕様

発売：

1965年(昭和40年)

電源：

単2 x 3 (4.5V)

トランジスタ等：

TR 9石

操作：

電源SW付ボリューム、トーンSW(H/L)、チューニングダイヤル、ライトSW

音声出力：

バーアンテナ：

120mm

表示等：

受信周波数：

AM:: 530 - 1605 kC
FM:: 86.5-108 MC

ターミナル：

Earphone, MPX-out, Aux-in

サイズ：

H110mm x W160mm x D40mm

重量：

約615g(電池別)

色：

黒、赤

製造：

日本製

価格：

11,500円（現金正価）

メンテナンス

音が出ない不動品ということで購入しました。電流を確認しましたが、ゼロでした。

裏蓋は電池交換のために、丸ごと外れるようになっています。。内部はそれなりに埃が積もっていますが、前面ケースに固定するためのネジが欠落しているため、ぐらぐらです。
基板は機能別に独立しています。中央のパターン面が見えるのが低周波増幅、下側の部品の詰まっている基板が、AM高周波、AM/FM中間周波、左側バリコンに近接しているのがFMの高周波の基板のようです。

スピーカーは楕円形・縦方向につけられています。本体フレームは、前面パネルにネジ４本で固定されていますが、受け側が２箇所欠損していました。そのため、ネジも外れて紛失していました。

通電しないのは電源SWに積もった埃・汚れが原因でした。綿棒・楊枝類で清掃して、細かいサンドペーパーで接点の汚れを落としました。これで電源は入るようになりました。基本的にはラジオ本体の動作は問題なさそうでした。
また、ボリュームのガリのため、ここも分解・清掃しました。

ネジ受けの欠損部ですが、ポリエチ袋で型を作り、エポキシ接着剤を流し込んで補修しましたが、ネジ穴を開けようとしたら、割れてしまいNGでした。

弾性パテにて再トライしました。色が白色で見た目は浮いてしまいますが、基板の中ですのでOKとしました。穴の部分は楊枝を中央部において確保しました。乾燥後、強く締めすぎて壊さないよう、慎重に基板を固定できる程度まで締めましたが、問題ありませんでした。

カタログ情報など

商品のしおり(53)

高感度
FM/中波　２バンド・ポータブル
ソリッドステート10 ￥11,500 (￥12,100)
ヤングエリートのFM、メサ型トランジスタの活躍する高感度。ステレオアダプターにつないでFMステレオも楽しめる。音質切替、ダイヤルランプも完備。

価格は現金正価、括弧内は定価（割賦価格）です。放送が始まったばかりのFMには「ヤングエリート」なる枕言葉がついております。