SONY 2R-29

Serial No.921526

Serial No.925354

概要

2R-29はAM専用のポケットタイプのラジオです。トランジスタラジオとしてはコンパクトのサイズです。機能としてはAM放送を聴くための最低限です。構造もシンプルで、基板直付けのバリコン・ボリュームにつまみが直付けされています。
本体は直方体ではなく、後ろの側の下部がすこし削られた形になっています。前面にはアルミのパネルが使用されています。三角形配列のパンチングに黒い横すじが印刷された特徴のあるパネルです。写真の個体は状態が良くなくて消えかかかっていますが、前面には、"SONY ALL TRANSISTOR"と書かれています。すでにこの頃には真空管式のポケット、ポータブルは完全に駆逐されていたと思うのですが。
2R-28から32の型番は埋まっており、これらのラジオは基板の見た感じは似通っています。中身は6石だったり7石だったりとか、回路的には多少変更されています。
パーツは日本製が主体です。スピーカーは「スピーカーのパイオニア」製、バリコンはミツミと、メジャーどころです。ケミコンはマルコンの樹脂パッケージのものが使用されています。マルコン電子株式会社は、もともとは東芝の一工場としてスタートし、最終的には日本ケミコンに吸収されています。
トランジスタは6石、すべてゲルマニウムのPNP型トランジスタです。写真のものは、局発/混合:2SA201, IF増幅:2SA202B(2SA198) x 2, AF電圧増幅2SB186(2SB270), AF電力増幅:2SB187 x 2です。電力増幅は入出力トランスを用いたプッシュプルです。使用トランジスタは機種によりバリエーションがあるみたいです。括弧内は、回路図に記載されている型番で、お互いほぼ同仕様のコンパチのようです。

仕様

発売:

1968年**

電源:

単3x2 (3V)

トランジスタ等:

6 TR*

音声出力:

115mW(EIAJ)**

バーアンテナ:

約53mm

スピーカー:

57mm, 8Ω**

操作部:

電源スイッチ付きボリューム、チューニング

表示等:

受信周波数:

MW:: 535 - 1605 kC*

中間周波数

455kC(MW)*

ターミナル:

イヤホン

シリーズ:

サイズ:

W200mm x H105mm x D46mm

重量:

約150g

色:

黒、赤、白

製造:

日本製*

価格:

*本体表記, **トランジスタラジオ回路図集6

メンテナンス

通電はしますが、放送は極くかすかな音でほとんど聞き取れず、触りどころにより止まるときもありますが、発振していました。また、本体の割れやパネルの錆・へこみ、ペイントも剥げており、内部も錆や汚れがある状況で、全般に状態は悪いです。
発振はどの周波数でも発生するので、ドライブアンプ手前のデカップリングコンデンサー不良との判断で取り外して交換しました。
交換で、発振は改善すましたが、放送は相変わらずほとんど聞こえませんでした。外した電解コンデンサーの容量が抜けていたことから、他の3つの電解コンデンサーも交換、普通には聞こえるようになりました。
最近は小さくても大容量のコンデンサーもあるので、パターン面に並列に付けるほうがスマートかもしれませんが、手持ち部品の都合で古い部品は取り外して、通常のケミコンに交換しました。

電池交換のため裏蓋は外れるようになっています。乾電池は専用のケースはなくやや座りが悪いです。上側の電池は少し後ろ側にくる形で入れますが、スピーカーで受けるような形になっています。段違いの電池をうまく抑えるために、裏蓋の下側が削られたようなデザインになっています。

電極は真鍮製のようです。全般に錆、汚れがひどいです。電極は金属へらとサンドペーパーで汚れを落としました。

基板だけで動作確認しましたが音が非常に小さく発振しがちです。低周波TR手前のケミコンの交換しましたら、発振は納まった感じですが、音が小さくて聞き取れないレベルでした。外したコンデンサーの容量を測定したら、3μFに対して0.5nF(@1kHz)程度しかありませんでした。

電解コンデンサーは、他にも3個使われていますが、同様にNGっぽいので交換としました。外して確認したところ、

30μF -> 1.25nF（AGCの平滑用）
30μF -> 90nF（電圧増幅コンデンサーのパスコン）
50μF -> 190nF（上流側の電源安定用）

と、軒並みNGでした。どうも古い樹脂容器のケミコンはダメになっていることが多いように感じます。

ブレッドボード用にアマゾンで買った廉価なセットものしか手元に無かったので、念のため容量を確認して使いました。愛好家の方のページで、元のコンデンサーはそのまま残してパターン面に積層セラコンを付けて修理されているのを見かけましたが、外観・基板へのダメージという面で好ましいかもしれません。50μFぐらいまでは秋月で買えます。

足を折ってからはんだ付けされている部品が多く、コンデンサーを外すのにしっかりはんだを取らないといけませんでした。再はんだ付けに時に接触が心配なところはチューブを巻きました。

バラックのままテストしました。完全にもとに戻ったかは分かりませんが、概ね使用には問題のないレベルです。

ケース下部の両側にクラックがあります。電池の力がかかるところなので、難しいかもしれませんが、エポキシボンドでトライしてみました。

本体を拭いていたら、周波数ののぞき窓が取れてしまいました。3隅にボンドを塗り、留めなおしました。

ケミコン交換後です。動作も問題ありませんでした。

結構、テープが多用されていますが、劣化などで粘着性がダメになっているため、交換しました。べとつきが少なく、高耐久な絶縁テープいうこというふれこみの、アセテートテープというものを使ってみました。

電池の金具のばね感がなくなっており、更にそこを押さえる本体にひびが入っていることから、電池の接触がよくないです。応急対策としてマイナス金具の後ろ側にスポンジ状のものを入れてました。本体の接着は見たところ良好のようです。

メンテナンス2

通電しますが、音は小さいです。メンテ1のラジオよりは大分大きく聞こえます。症状が同様で、ケミコンも樹脂製ですので、同じようにコンデンサーの容量抜けのようです。あとボリュームの接触が悪いです。

ケースに割れはありますが、ひどくないのでそのままにしました。基板を留めている2本のビスのうちの一つが脱落していました。

電池交換は裏蓋を外すタイプです。このラジオは電池電極の液漏れ汚れがない、この時代にしては珍しいラジオです。

ビス2本はずすと、基板は簡単に外れます。

スピーカーを外せば、前後ケースと分離できます。

スピーカーの汚れはひどくありませんでした（写真はブラシで清掃後です）。

4か所のケミコンに、パラに同容量のケミコンを当てて、確認しました。低周波の電圧増幅TRの交流バイパス用と、中間周波増幅1段目のベースの交流バイパス用の2つがNGで、後は容量減っているかもしれませんが、とりあえずの動作には問題なさそうでした。外した30μFのケミコンは、完全に液が無くなったのか50nFしかありませんでした。

本体は、水・エタノール拭きしました。

ボリュームは分解できるタイプでした。カバーが接着剤で留めてあったので、復旧時に粘着剤で固定しました。黒いコンデンサーは交換したものです。2周りぐらい小さくなっています。

2021/12/26, Last update 2023/07/07

No.115